最近の子どもは、身長・体重など体格は向上しているのに、体力や運動能力は低下しています。
原因としては、塾通い、ゲーム、空き地や公園の減少、少子化などが挙げられます。
走る・投げる・蹴るなど子どものうちに獲得すべき能力をつけておかないと、将来、陸上競技や、野球・サッカー・テニスなどの球技を行う上でかなり影響を及ぼすと考えられています。
小学生の、運動能力、中でも、投能力の低下が挙げられているのです。
かつては、子ども達に大人気だったはずのドッジボール、お父さんとの定番の遊びだったキャッチボール、今はそれをする機会が減り、必然的に、「できる」満足感や褒められることもなくなり、能力低下につながりました。
そして、これが無ければ、あらゆるスポーツへの参加が減少するとまで言われているこの「投げる」運動能力。
これを子どものうちに伸ばすために遊びながらできる運動を、とりあげてみました。
Contents
投げる力をつけるために小学生がしておきたい5つの運動は?

①キャッチボールをする
小学校では、運動の中に、投の運動を加えて指導するようになりました。
ここでいう「投の運動」は、「遠くに力一杯投げること」がねらいです。
しかし、投げる経験が少ない子供の多くは、正しい投げ方を知りません。
そこで、投げる形の大体の形を確認してやりましょう。
具体的には、この一連の動きです。
- 投げる前に横向きになること
- 両腕を左右に開いて肘を上げること
- 体重を後ろ足に移動した後、前の足を1 歩前に踏み出すこと
- スナップを利かせて腕を振り下ろすこと
慣れるまでは、「1、2、3」と声を出して、投げ方の確認をすると効果的です。
少しずつ距離を延ばしていってください。
学校の体育で「投げる」という動きは、体つくり運動では用具を操作する動きとしての「巧みに投げる」動きにつながります。
ゲームでは味方が捕りやすいようなパスや相手がいない場所をねらうシュートとしての「投げる」という動きになります。
思ったところに投げるということを子供自身が理解して、休み時間に友達とボール遊びをしたり、キャッチボールで相手のミットに入る投球をしたりすることが、投力向上を図るうえで重要になってきます。
ボール投げが苦手という場合は、まず家の中で、柔らかいボールを使い、床に座って、手首を使って投げる練習から始めてもいいでしょう。
ある程度思ったところにボールを投げるこつをつかんでから、立ち上がり、距離を延ばしていきましょう。
キャッチボールが楽しいと思うようになるためには、ボールを受けることができることも欠かせません。
受け取るのが苦手なら、始めは、タオルやハンカチなど、つかみやすいものを投げ上げてつかむ練習からスタートしましょう。
手先だけでなく、素早く落ちてくるハンカチの下に移動して、両手でとらえるようにしましょう。
つかみやすいし、痛くないので、何度でも練習できます。
上手になったら柔らかいボールに替えて、キャッチボールを始めましょう。
②的あて
とてもシンプルですが、投げる力と、コントロールが養われます。
ボールをしっかりにぎること、それから、投げる時の足にも気を付けてください。
手と反対側の足を前方に踏み出し、重心移動をさせているか見てください。
③メンコ打ち
両脚を肩幅より広めに開いて立ち、床にお盆くらいのを置きます。
その的目掛けてメンコを思い切り投げます。
パチッといい音が鳴るくらいに叩きつけます。
肘の使い方が自然に良くなります。
④垂らした新聞紙を破る
物干しや木の枝などに新聞紙を一枚広げて吊るし、それを目掛けてボールを投げます。
新聞紙を破るには、かなり投げる力が要ります。
小学校中学年での「遠くに力一杯投げることを楽しむ」学習に生かせます。
思い切り投げる機会が少ない子供にとっては、投げる経験を重ねることが大切です。
といっても、投げる能力の向上だけねらってトレーニングしても、遠くに投げることを楽しんだり技能が飛躍的に向上したりすることは期待できません。
単調な運動は長続きしづらいです。
そこで、自分から進んで運動に取り組んだり、遠くに投げることを楽しみ、ボール投げそのものを好きになるような工夫をしていく必要があります。
新聞紙を破る、という目に見える目標があるので、分かりやすく、そんなに広い場所が無くても、思い切り投げる練習ができます。
⑤種まきゲーム
子供が複数いたら、楽しみながら投げることができるゲームです。
物干しや、あればバドミントンのネットを利用します。
高さを150㎝くらいにして、たくさんのボールを用意し、ネットを越してボールを拾っては投げ拾っては投げします。
この時、投げ方に条件をつけると、おもしろくなり、体を上手に使って投げる力が付きます。
例えば、できるだけ高く投げる、利き手の反対の腕で投げる、両腕で投げる、気を付けの姿勢で投げる、一度ボールを地面にバウンドさせる、座って投げる…などです。
ゲームを開始する前に、安全に行うためのルール(例えば、顔に向かって投げない、蹴らないなど)を話し合うと、けがなく、みんなが楽しむことができ、ルールを守ることの大切さを学ぶこともできます。
⑥ロングスロー&ダッシュゲーム
スローラインとポイントラインの2本線を引く。
スローラインの位置は線を引き固定、ポイントラインの位置はボールを投げる人によって変動する。
2本の線の間にブロックが入る。
ブロックされずにボールがポイントラインを越えたら得点。
攻撃は、1 人2 分間。
投げる人に応じてポイントラインを移してもよい。
投げ方はオーバースローのみ。
ボールは、あればドッジボール1 球、ハンドボール1 球、玉入れ用の玉1 球など3種類の計3個、無ければ何でもよい、とにかく3回投げられる。
ポイントラインを越えないボールはすべてファールとなり、得点にならない。
時間内であれば何回投げてもよい。
守備は、全員スローラインとポイントラインの間に入り、投げられたボールがポイントラインを越えないようにブロックする。
片方のチーム全員が投げたら交代。
守備だったチームが一人3球ずつ投げ、相手チームがブロックに回る。
両チームの全員が投げ終え、得点が多いチームの勝利。
⑦バランスボールで腕立て伏せ
両手を着く場所を、床ではなくバランスボールにします。
プッシュアップをバランスボールの上で行うことで、横に体が流れないように支え、体幹を安定させようとします。
投げるために使う肩甲骨、背骨、骨盤を使ったエクササイズです。
①②④では、肩、腕だけでなく全身を使う。
・肘を上げる。
・目線を上に向ける。
・投げる手と反対の足をしっかりと前に踏み込む。
これに留意してください。
まとめ

運動能力を伸ばすには、幼いうちから自由に遊ぶ経験が欠かせません。
それには、安全な環境と、大人の見守りが不可欠で、その中で子どもは活動し、充足感を得て、ますます遊びが好きになっていきます。
飛距離が伸びると、投げることそのものが楽しくなってくるからです。
実際、正しい投げ方で飛ばすことができるようになった児童は、「ボールが飛ばなくておもしろくなかったけど、飛ばせるようになってからは、何回投げても飽きない。おもしろい。」と言います。
投動作は、全身を使った運動であり、また、身体の発達だけでなく脳や心の発達、やる気や活力に影響するといわれています。
是非、大人の見守りとアドバイスで、子ども達にもっと「投げる」遊びをする機会を与えてあげてください。