ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ…と数えて、ここのつ、とおで10歳になります。
昔から、子育ても「つ」がつかなくなると手が離れると言われてきたものです。
「つ」がつかなくなる、つまりここのつからとお(9歳~10歳)になる時期のことです。
そして、手が離れる、つまり自分のことが自分で出来るようになるということです。
実際どうでしょうか。
確かに小学校低学年の間はまだまだ目も手も離せませんでしたが、中学年になってくると、学校にも慣れ、友達とよく遊び、宿題や片づけ、学校の準備なども自分でできるようになってきます。
昔は「手が離れる」といって成長を喜んだこの時期に、なぜ今9歳の壁が立ちはだかっているのでしょうか?
現代の子供たちは、9歳の壁(勉強や人間関係など様々な点で起こりうる問題)に行く手を阻まれています。
どうすればこの壁を越えられるのか、そのために親ができることは何かを考えていきましょう。
Contents
9歳の壁を越えるために親ができる5つのこと

①読む力をつける
壁の一つに、学習内容が高度になってくることが挙げられます。
国語では、言葉の内容が具体から抽象に移行していきます。
「先生あのね」(話し言葉)だった作文が、書き言葉中心の学習に変化します。
書き言葉には抽象的な概念や高次な学習言語も含まれるので、読書習慣がついていないとこれらの理解に時間がかかります。
宿題に、「教科書の音読」がありますか?
もしあるなら、それをいい加減にせずきちんとやらせることです。
正しい言葉を正しい発音で読ませる。
家事をしながらでいいので、始めから終わりまで聞いてやり、たどたどしい部分はやり直させ良かったところをほめます。
ただし、できるまで何度でもではなく、正しい読みをその部分だけ親が聞かせて、その通り読めたらすぐによしとします。
しつこい指導は音読嫌いを招きます。
もし音読の宿題が無くても、是非読ませたい。
宿題にないからしないと言うなら、時々、「聞かせて」と言って読ませるといいでしょう。
親も是非、子供の学んでいる教材を読んでみるべきです。
3~4年生がどれくらいの量と質の言語を理解することを求められているのか、よく分かります。
そうしたら、自然に子供への声掛けに、どのような言葉を使えばいいのか分かってくるでしょう。
挨拶をし、文章で話しかけましょう。
~だから~しましょうね。
~しようとしたのよ。なのに~してしまったの。
子供に正しい接続詞を使って文章で語り掛け、子供からもそれを求めましょう。
②計算を根気よくさせる
宿題に、必ず計算練習があるはずです。
それを、ノートに、きれいな数字で、桁を揃えて物差しを使って線を引き、最後まで落ち着いてやらせ切りましょう。
計算間違いは「間違い」です。
分かっているのにうっかりしていたのも「間違い」です。
桁がずれていた、小数点を忘れていた…すべて「間違い」です。
それをゼロにさせましょう。
初めは少し時間がかかっても、点数が上がったらやる気も伸びます。
天才のノートはどこに何が書いてあるのか分からないとか、計算なんて手段なんだから、答えが出ればいいなどと言われますが、小学校の間は、正しい字で、桁をきちんと揃え、問題と問題との間をきちんととって、誰が見てもすぐに分かるノートを作る力をつけるべきです。
そのほうが、確実に点数とやる気と精神衛生の向上につながります。
丁寧に何事にも取り組めるようになります。
天才さんは、それから好きなように伸びてください。
③子供の話を聞く
うちの子は、学校の話をしないから。
というお母さんがよくおられますが、誰にだって自己表現の欲求はあるもので、特に子供は自分に関心をもってくれて、嬉しくないはずは無いんです。
それが、子供の話をまるで聞かなかったくせに、思春期になって行動や交友関係が心配になったからといって急に根掘り葉掘り聞き取り調査みたいなことをするから、「うるせえ」となるんです。
低学年の「お母さんあのね…」が、忙しいときであっても、手を動かしながらであってもうんうんと聞いてやり、中学年になって、何もかもは言わないけれどもちゃんと聞き役をして話をさせるようにしておけば、中学生になって聞き取り調査のごとき質問攻めで鬱陶しがられることもありません。
中学年になると「ぼくが」「わたしが」の世界から、周りが見えるようになってきて、自分の弱さや欠点が気になり始めますから、言いたくないことも出てくるでしょう。
でも、何か親に聞いてほしいものはもっています。
それを聞いてやりましょう。
言いたがらなければ、わたしが4年生だった頃ね、と自分の話をしてやりましょう。
多少脚色しても構いませんから、あまりに出来過ぎるよりもちょっと失敗した、だけどがんばった、みたいなエピソードを用意しておくとよいと思います。
今のお子さんに寄り添えるような思い出を、探してみましょう。
④子供の良さを認める
大人でもそうですが、自分の悪いところは指摘されたくありません。
そこを直してやりたいと親としては思ってのことなのですが、つい、あなたのそこがいけないのよと言ってしまいがち。
「I(アイ)メッセージ」とよく言いますが、Iつまり「わたし」を主語にし、お母さんはあなたがこうしてくれると嬉しいという伝え方にしませんか。
そして、できたことはすかさずほめましょう。
えらかったね。
いえ、それも「I」がいいかもしれません。
あなたがそうしてくれて、お母さんは嬉しい。
お母さん、お父さんの喜ぶ顔は、子供にとって何よりの賞賛です。
すごいね!もいいですね。
⑤手伝いをさせる
小学校での人気者基準は、大人社会とは少し違いますね。
小学校では、球技ができること(特にドッジボール)。ちょっとお調子者。
そして、お手伝いが上手なことです。
お手伝い?
と思われるかもしれませんが、お手伝いができる子は忙しい先生にかなり重宝がられます。
先生は常に忙しく、また、学校はハプニングだらけ。
これをしながらあれも気になる、というのが先生で、例えば、つぎは体育館に行かなければならない、体育館の鍵を職員室に取りに行って、マットと跳び箱を運んで…と考えていたのに、だれかが転んで膝を擦りむいたなんていうことはしょっちゅうです。
もちろんけがをした子の方を優先させますから、体育館の鍵は誰かに頼みたい。
となると、しっかりした子、先生ばかりの職員室に入って「3年2組の山田です。体育館の鍵を取りに来ました。」と大きな声で言える子、大事な鍵を落とさず持ってきてくれる子が選ばれます。
「〇〇さん、これを~へ持っていってくれますか。」
など、ちょっとしたことですが、確実にやり遂げてくれる責任感の強い子、大人と言葉を交わせる度胸と礼儀のある子、そんな子は、必ず先生から頼りにされ感謝されるのです。
それは、贔屓でもなんでもありません。
ただただ信頼と感謝に過ぎないんです。
また、給食をこぼさず、食器を汚さず、具も汁も平等に注ぎ分けるなども賞賛に値します。
信頼、感謝、賞賛、それらを勝ち取れる子は、家庭でやっている子です。
中途で投げ出さずやり切って、大人が何を求めているのかちゃんと分かっているのです。
そんな子は、級友からも一目置かれますから学校が楽しい。
そんな子には9歳の壁は無い、とは言い切れませんが、あっても容易に越えていけるでしょう。
生活力は、自信と信頼につながります。
それをつけるのは、家庭でのお手伝いしかありません。
まとめ

勉強のつまずき、人間関係の複雑化。
「ここのつ、とお」昔のように、「つ」が取れたからといって手が離れたと安心してばかりもいられません。
現代社会における「ここのつ、とお」の子供たちには、それぞれに悩みもいろいろあるようです。
でも、越えられない壁はありません。
勉強も、友達関係も、話し合い、認め合い、親子で協力して、「9歳の壁」を乗り越えていきましょう。
そして、家族や友達、低学年を思いやり、学ぶ姿勢と探求心のある素敵な高学年に育てていきましょう。
家庭で、ご家族の温かい愛情の中、子供は安心して失敗し、成功し、成長していくのです。